お知らせ

2026.08.17

【開催報告】第2回 健やかラピス早期診断アライアンス研究会:診断前後の「空白」を埋める新たな医療インフラの構築へ

一般財団法人すこやか親子支援協会は、2026年7月8日、ホテルニューオータニ紀尾井フォーラムにて「第2回 健やかラピス早期診断アライアンス研究会」を開催いたしました。本研究会では、医療従事者、データ専門家、製薬企業、そして患者家族会が一堂に会し、希少・難治性疾患患者が直面する「診断前の迷走」や「診断後の孤独」という空白をいかに埋めるべきか、具体的な解決策と連携のあり方について熱い議論が交わされました。

1. 開会挨拶:研究会の目的と背景

専務理事の川口耕一より、本研究会の核心的な目的として「診断前後の空白を埋める中間組織」の構築が提示されました。既存の公的制度では対応が難しい「未診断期」のナビゲーションや、専門医と非専門医をシームレスにつなぐ相談窓口の全国展開を目指し、産官学民が一体となった新しい医療インフラの姿を提示することが今回の狙いです。

2. 専門家・企業によるプレゼンテーション

眼領域における早期診断の重要性(神戸アイセンター病院 前田亜希子氏)

遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)を例に、遺伝子治療(ルクスターナ等)の恩恵を最大限に受けるためには、10歳まで、将来的には3歳未満での早期診断が極めて重要であることが示されました。現在、専門医と地域の医師をつなぐWeb相談窓口の運用が始まっており、診断ラグの短縮に向けた実証が進んでいます。

相談窓口の役割と既存制度の隙間(国立成育医療研究センター 盛一享徳氏)

希少疾患は統計的に遭遇する確率が極めて低いため、一般医が診断することは学問的にも困難であるという現状が語られました。これを補完するため、AIによる情報の構造化や、1次・2次機能に分けた「中間支援機能」としての相談窓口の理想像が提案されました。

データ基盤によるマッチング(ミーカンパニー株式会社 前田健太郎氏)

15年にわたり蓄積された医師・医療機関データベース「SCUEL(スクエル)」を活用し、AI解析によって「特定の疾患を診られる可能性のある医師」を特定する取り組みが紹介されました。これにより、患者が地域で適切な専門医に早くたどり着ける仕組みを支援します。

経過観察期の余白と患者サポート(アレクシオンファーマ合同会社 石井朝憲氏

神経線維腫症1型(NF1)などを例に、成人期のNF1患者が情報不足や疾患への「慣れ」で通院を中断する「空白」に対し、腫瘍の悪性化リスクを回避するため、医療継続の重要性を提言されました。
専門看護師による伴走やAI技術を活用した「ペイシェント・サポート・プログラム(PSP)」を通じ、心理的ケアと専門施設へのシームレスな橋渡しを行う展望が語られました。

3. 患者家族の声:診断は「希望」への第一歩

HNRNP疾患患者家族会(代表 鈴木歌織氏・ビデオメッセージ)

初診から診断まで平均3.9年を要し、その間「診断前の闇」に苦しんだ経験から、「早期に遺伝子検査という選択肢を提示してほしい」という切実な訴えがありました。

FOXG1症候群患者家族会(代表 池田真紀子氏

11歳でようやく診断がついた経験を振り返り、「診断は原因不明の不安から家族を解放する」と強調されました。また、患者会は単なる支援対象ではなく、情報発信を通じて共に治療法を確立する「パートナー」であるという力強いメッセージが送られました。

4. パネルディスカッション:チームとしての連携

モデレーターの堤正好氏の進行により、登壇者による討論が行われました。希少疾患の診断前にある「空白期間」や小児から成人への移行期における課題を解決するため、医療・企業・患者会が連携し、既存の医療制度を補完する「中間支援機能」の具体像について議論されました。
病院側からの情報提供が制限される中、患者自身が同意のもとで遺伝情報などを持ち寄る「患者参加型研究」の推進や、AIチャットボットを活用した心理的障壁の低い相談窓口の構築が解決策として提示されました。
患者家族を支援対象の「弱者」ではなく、情報を共有し治療法確立を目指す「対等なパートナー」と位置づけ、官民学が一体となったチームで早期診断インフラを整備していく方針など、活発な意見交換がなされました

5. 厚生労働省からの講評:行政の視点

プログラムの最後には、オブザーバーとして参加した厚生労働省の渡辺洋之助氏(難病対策課 課長補佐)より講評をいただきました。渡辺氏は、診断までの時間の長さについて「なんとかしないといけないなと思っている」と述べ、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)等の既存事業に触れつつ、今後の方向性について次のように語りました。

「AIというものは利活用するべきものであって、どんどん生かしていくものではございますが、最後はやはり人が診断するもの。その体制を整えることや、非専門医と専門医をつなぐというようなスキームも大事なんだなというふうに思いました」

6. 今後の展望

川口専務理事は「今回集まったメンバーは一つのチームのようだ」と総括し、この成果を2026年9月に開催予定のフォーラムにおいて社会に広く発信する予定であることを発表しました。すこやか親子支援協会は、今後も希少疾患患者が「難病難民」とならない社会の実現に向け、プラットフォーム作りを加速させてまいります。

主催:一般財団法人すこやか親子支援協会

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